不動産の賃貸借契約において「フリーレント」という言葉を聞いたことがあると思います。
「フリーレント」とは、賃貸借契約期間中の一定期間(当初の2ヶ月等)について家賃を無料にするというサービスです。不動産の貸主が借主を募集しやすくするために、よく目にします。
このフリーレント契約がある場合、会計の世界では『フリーレント会計』という処理を適用する場合があります。
<フリーレント会計とは?>
フリーレント会計とは、『賃貸借契約期間中に支払う家賃総額をフリーレント期間を含めた賃貸借契約期間全体の月数で割って毎月の家賃計上額を平準化する』という会計手法です。
では、具体的にみてみましよう。
下記の契約を法人(事業年度は毎年1月~12月)が事務所用として契約したとします。
(賃貸借契約期間)2020年1月~2021年12月までの24ヶ月間
(月額家賃)10万円
(フリーレント期間)2020年1月~6月までの6ヶ月間
2020年1月~6月までの6ヶ月間は家賃が無料となる訳ですから、当該法人における2020年1月~12月までの事業年度に発生する家賃支払額は計60万円(=月額10万円×6ヶ月)となります。
ここでフリーレント会計を適用すると下記のようになります。
(賃貸借契約期間中における支払家賃の総額)月額10万円×18ヶ月=180万円
(賃貸借契約期間中の1ヶ月当たりの平均家賃額)180万円÷24ヶ月=75,000円(A)
(2020年1月~12月までの事業年度において計上する家賃)75,000円×12ヶ月=90万円
フリーレント会計を適用した場合、2020年1月~12月までの事業年度中に損益計算書に計上する家賃額は、計90万円となります。
つまり、『フリーレント期間を含めた1ヶ月当たりの平均家賃額(A)の12ヶ月分を当事業年度中に計上すべき家賃額』と捉え、損益計算をすることになるのです。
<消費税との関係は?>
では、当該法人が消費税の課税事業者(本則課税)であった場合、2020年1月~12月の課税期間における課税仕入となる家賃額は、『実際に支払う60万円』または『フリーレント会計を適用した90万円』のどちらになるのでしょうか?
結論は、『実際に支払う60万円』が当課税期間における課税仕入となります。
この論点については、2018年6月15日付で国税不服審判所が裁決を出しております。
<法人税との関係は?>
では、法人税との関係はどうなるのでしょうか?
当該法人の2020年1月~12月の事業年度における法人税の計算上、損金として認められる家賃額は『実際に支払う60万円』または『フリーレント会計を適用した90万円』のどちらになるのでしょうか?
この点も上記の裁決事例で明らかにされており、損金として認められる家賃額は、『実際に支払う60万円』である、という結論が出されています。
《終わり》