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課税売上割合に準ずる割合

<消費税の計算方法(本則課税の場合)>
本則課税による消費税の計算は、簡単に言うと、『売上収入により事業者が預かった消費税(仮受消費税)から仕入等により事業者が支払った消費税(仮払消費税)を控除して、その残額を税務署へ納付する』という仕組みです。

 

 

<課税売上割合>
上記の計算を行う場合、当該課税期間中の課税売上高と非課税売上高を基に『課税売上割合』という割合を計算します。

 

この課税売上割合が95%以上であれば、上記のとおり、事業者が預かっている仮受消費税から事業者が支払った仮払消費税の全額を控除して納付税額を計算することが出来ます。

 

<95%未満だったら?>
ところが、この課税売上割合が95%未満となった場合には、事業者が預かっている仮受消費税から事業者が支払った仮払消費税の全額を控除することが出来ないのです。


よって、納付税額が増加する傾向にあります。

 

しかし、時には、所有している土地を売却することにより、その課税期間における非課税売上高が急増するケースもあるでしょう。

 

このように所有している土地を売却する等、『たまたま』非課税売上高が急増し、課税  売上割合が大きく減少してしまった場合、何らかの救済措置はないのでしょうか?

 

<課税売上割合に準ずる割合>
上記のように『たまたま』多額の非課税売上高が発生し、課税売上割合が大きく減少してしまった場合には、『課税売上割合に準ずる割合』という制度を適用することが可能です。

 

この『課税売上割合に準ずる割合』とは、当該課税期間中の実際の課税売上割合ではなく、一定の方法により算出した割合を指します。

 

一般的には、直前3年間の課税売上割合を通算した『通算課税売上割合』を用いるケースが多いと思います。


この『課税売上割合に準ずる割合』を用いて計算すると、『たまたま』発生した土地の売却等の突発的な多額の非課税売上高を度外視して納付税額の計算が可能となり、納付税額の増加を抑えることが出来ます。

 

<申請期限は何時までに?>
上記の『課税売上割合に準ずる割合』の適用を受ける為には、一定の事項を記載した『消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書』という書類を所轄税務署へ提出する必要があります。

 

当該申請は、原則として『承認を受けた日の属する課税期間』から適用を受けることが可能になります。

 

但し、課税期間の末日までに申請書を提出し、且つ、当該提出をした日の属する課税期間の末日の翌日から1ヶ月以内に承認を受けた場合には、当該提出をした日の属する課税期間から適用を受けられます(消令47⑥

 

承認が下りるまでにはある程度の時間を要する為、当期から適用を受けたいのであれば、時間に余裕をもって早めに申請書を所轄税務署へ提出するのが良いでしょう。

 

 

≪終わり≫

(敷金償却と原状回復費用)消費税の課税関係は?

<賃借物件からの退去と敷金の償却>
賃貸マンションから退去する際、原状回復工事が発生した為、その工事費用に充当するという理由で借主が貸主へ預けている敷金から当該原状回復工事相当額を減額される場合があります。

 

この場合、貸主側における消費税の課税関係はどうなるのでしょうか?

 

例えば、借主が預けていた敷金が30万円、原状回復工事費用が10万円、借主への敷金返金額が20万円(=30万円-10万円)だったと仮定します。

 

貸主側では、原状回復工事費用が10万円発生し、敷金の償却収入が10万円発生することになります。

 

先ずは敷金の償却収入に対する課税関係をみてみましょう。

 

この敷金の償却収入は、貸主が借主へ提供する『リフォーム工事』に係る役務提供の対価と考えられる為、消費税における課税売上収入となります。

 

貸主自らが原状回復工事を施工せず専門業者へ外注した場合も同様に課税売上収入となります。

 

では次に原状回復工事費用についてみてみます。

 

原状回復工事なので、当該費用は消費税における課税仕入となります。

 

この場合、当該貸主側の仕入税額控除の計算方法が『全額控除』又は『個別対応方式』のいずれに該当するのか?によって当該原状回復工事費用の課税仕入の取扱いが変わってきます。

 

(1)全額控除の場合

仕入税額控除の計算方法が全額控除、つまり、課税売上割合が95%以上であり、且つ、当該課税期間の課税売上高が5億円以下である場合には、単に課税仕入として処理すればよいことになります。

 

(2)個別対応方式である場合
仕入税額控除の計算方法が個別対応方式、つまり、課税売上割合が95%未満である場合、又は、当該課税期間の課税売上高が5億円を超えている場合には、当該原状回復工事費用の考え方は難しくなります。

 

当該原状回復工事が『通常損耗』に起因するものなのか?又は、『特別損耗』に起因するものなのか?によって消費税の取り扱いが異なってくるからです。

 

<通常損耗である場合>
一般的に『通常損耗』と呼ばれる損耗、つまり、賃借した部屋で暮らしていれば通常発生すると考えられる損耗であれば、借主に負担義務は無く、貸主が負担すべき費用となります。

 

何故なら貸主としては、当該損耗が発生することを見込んで家賃額を設定していると考えられるからです。

 

しかし、貸主と借主との間の合意に基づいて借主が負担することとなっている場合もあります。

 

この場合、この通常損耗としての原状回復費用は、『家賃収入を得る為の費用』と考えて、『非課税売上のみに要する課税仕入』として処理することになります。

 

<特別損耗である場合>
当該原状回復工事が上記の通常損耗を超えた特別損耗、つまり、借主側の故意や善管注意義務違反に起因した工事であれば、当該原状回復工事費用は、明らかに借主が負担すべきことになります。

 

この場合、当該原状回復工事費用は、貸主が借主へ提供する『リフォーム工事』に係る役務提供収入に対応した費用と考えて、『課税売上のみに要する課税仕入』として処理することになります。

 

 

≪終わり≫

(簡易課税)中間省略_業種区分は?

<不動産売買における中間省略>

不動産の売買取引の際、『中間省略』という手続きが用いられることが多々あります。

 

これは、売主Aが買主Bへ売却し、同日付でBが売主となって新たな買主Cへ譲渡する、という手続きです。

 

その結果、対象となる不動産の所有権は、最終的に買主Cへ移転し、Bは書類手続き上、右から左へ流すだけとなります。

 

ではもし、Bが消費税の課税事業者であり、且つ、簡易課税を選択していた場合、上記の不動産売買の取引は、簡易課税の適用上、第何種に該当するのでしょうか?

 

<中間省略による売却は『第一種』>
この論点について争われた事例が、2006年12月13日付で国税不服審判所において裁決されています。

 

上記の例で言えば、Bの当該中間省略による不動産売却について、税務署側は『不動産の売却であるのだから第四種(みなし仕入率60%)に該当する』と主張しています。

 

一方、Bは、『転売目的で仕入れて売却したのだから卸売業として第一種(みなし仕入率90%)に該当する』と主張し対立しました。

 

上記の争いに対して国税不服審判所は、『Bは転売目的で当該不動産を仕入れており、取得時の現状のままCへ売却していることが確認出来る』と理由を述べ、Bの主張どおり卸売業として第一種に該当する旨の裁決を下しています。

 

 

≪終わり≫

高額特定資産の取得と2年縛り

<高額特定資産の取得と2年縛り>
本則課税を選択している事業者が、当期中に高額特定資産を取得した場合には、来期及び来々期の消費税申告について本則課税による申告が強制されます。(消法12条の4

 

例えば、毎年1月1日~12月31日を課税期間とする事業者(本則課税)が2021年12月期中に高額特定資産を取得したとします。

 

この場合、2022年12月期及び2023年12月期の両方について本則課税が強制される、という訳です。

 

<強制適用中に再度取得したら?>
では、上記の事業者が本則課税を強制適用されている2023年12月期中に再度、高額特定資産を取得した場合には、どうなるのでしょうか?

 

この場合、その取得した時点において再び上記の『2年縛り』が発動され、2024年12月期及び2025年12月期において本則課税が強制されることになります。

 

当該規定は、高額特定資産を取得した日の属する課税期間について、免税事業者の規定及び簡易課税の規定が適用されていない限り発動するのです。

 

よって、当該規定により本則課税を強制されている課税期間中に再度、高額特定資産を取得すると、そこでまた本則課税の強制適用期間が2年間延長され、その翌課税期間及び翌々課税期間について本則課税が強制されることになります。

 


≪終わり≫

(簡易課税)現状回復工事は「第三種」

<原状回復工事>
不動産賃貸契約において、借主が退去する際には、原状回復工事を借主側において実施することとしている場合があります。

 

しかし、場合によっては、借主が実施すべき原状回復工事を貸主(オーナー)が代行することもあると思います。

 

その場合、借主は原状回復工事に要する費用を貸主へ支払います。

 

貸主にとっては当該費用相当額の収入が発生するのですが、当該収入は、消費税の簡易課税を適用する上での事業区分は第何種になるのでしょうか?

 

 

<原状回復工事の代行は『第三種』になる>
上記のような貸主が代行する原状回復工事に係る収入は、リフォーム工事に該当する為、建設業として『第三種』に区分されることになります。

 

なお、当該区分は、貸主自らが原状回復工事を施工する場合は勿論のこと、貸主自らは施行せず、専門業者へ外注する場合にも同様に『第三種』に区分されることになります。

 

これは、貸主が原状回復工事の元請けとなり、当該原状回復工事を下請けに出す場合の考え方が適用されるからです(消基13-2-5(2)

 

 

≪終わり≫

(リース取引)消費税の仕入税額控除の時期はいつ?

<リース取引>
法人税法上のリース取引を行った場合、税務上では、そのリース対象資産の引渡し時において売買があったものとして処理します。
  
この法人税法上のリース取引には、更に『所有権移転型』と『所有権移転外型』の2種類に区分されますが、どちらも税務上では売買取引として取り扱われます。

 

 

<企業会計では例外あり>
しかし、企業会計上では、重要性の原則の観点から『所有権移転外型』の内、下記の2つについては、例外的に賃貸借取引(「リース料」等の費用科目で経費計上する処理)の適用を認めています。

 

 ■少額リース取引(リース料総額が300万円以下のリース取引)

 

 ■短期リース取引(リース期間が1年以内のリース取引)

 

 

<仕入税額控除の時期はいつ?>
ところで、企業会計には殆どの場合、消費税の処理がつきまとってくると思います。

 

上記のとおり、税務上では、リース取引であれば、『所有権移転型』と『所有権移転外型』のいずれの場合でも売買として処理されますが、企業会計上では少額リース取引と短期リース取引については、例外的に賃貸借取引の適用を認めています。

 

実務上、日々の消費税の処理は、企業会計の処理に準拠して進められるケースが多いと思います。

 

ここで問題になるのが、『リース対象資産に係る仕入税額控除の時期はいつなのか?』という点です。

 

具体的には、税務上では売買処理をすべきだが、企業会計上では賃貸借処理を採用ししている、というケースです。

 

消費税の仕入税額控除の計算を税務上の売買処理に合わせるのであれば、リース対象資産の引渡し時に当該リース対象資産に係る課税仕入高の全額を当該引渡し時に一括して仕入税額控除すべきことになります。

 

しかし、企業会計上では、当該リース対象資産を資産計上しておらず、リース代金を支払う都度、「リース料」等の費用科目で経費に計上している為、当該リース対象資産に係る課税仕入高の全額は、帳簿上に現れてきておりません。

 

このような場合、リース対象資産に係る仕入税額控除は、いつのタイミングで行えばよいのでしょうか?

 

結論からいうと、『リース料等の費用科目で経費に計上する都度、仕入税額控除を行って差し支えない』ということになります。

 

つまり、リース料等の費用科目で経費に計上する都度、当該リース料等を課税仕入高として処理して消費税の申告をしてOK、ということです。

 

この点の取扱いについては、国税庁の質疑応答事例『所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い』にて明らかにされています。

 

 

≪終わり≫

(ネット広告の取次業)課税売上高は幾ら?

<ネット広告取次業>
現代においてインターネット広告は、事業主にとって重要な広告手段となっています。

 

インターネット広告においては、広告を出す者(広告主)と広告を掲載する者(媒体主)との間に立って両者を取り次ぐ業者(取次業者)の3者間での取引になるケースが基本です。

 

この場合、基本的なお金の流れは下記のようになります。

 ①広告主
   ↓100万円
 ②取次業者
   ↓80万円
 ③媒体主

 

上記の場合、取次業者の手取りは20万円となり、これが取次業者の利益となります。

 

 

<課税売上高は幾ら?>
上記の例において、取次業者である②の消費税申告上の課税売上高は、幾らになるのでしょうか?

 

①・②・③の全てが国内業者であれば、下記のA又はBのいずれの方法も問題ありません。(但し、取次業者が本則課税であることが前提です)
 
 (A)利益である20万円を課税売上高とする。
 (B)①から受け取る100万円を課税売上高とし、③へ支払う80万円を課税仕入とする。

 

では、③の媒体主が国外業者だったらどうなるでしょうか?

 

この論点について争われた国税不服審判所の裁決事例が2008年2月1日付で公表されています。

 

事件の概要は、下記のとおりです。

 

取次業者は、利益である20万円のみを課税売上高として消費税の申告をしました。

 

しかし、税務署側は、広告主と取次業者との取引と、取次業者と媒体主との取引は、それぞれが独立した別個の取引である為、取次業者の課税売上高は100万円とすべきである、として更正処分をしてきました。

 

この更正処分に対して取次業者が不服申し立てをしました。

 

国税不服審判所が下した裁決は、『課税売上高とすべき金額は、取次手数料部分である20万円のみである』とするものでした。

 

この裁決は、消基10-1-12「委託販売等に係る手数料」の(2)の規定を素直に当てはめた結果と言えます。

 

 

≪終わり≫

 

 

(車両の売却)リサイクル預託金は『有価証券譲渡』となる。

<リサイクル預託金>
車両を購入する際には、リサイクル預託金を支払います。
これは、使用済みの自動車から発生する廃棄物の処理やリサイクルを行う為の費用として車両の購入に支払い義務が課されているものです。

 

 

<車両を売却したら>
所有している車両を売却する際、当該車両を購入時に支払ったリサイクル預託金相当額を受領する場合があります。


これは、リサイクル預託金を支払っていることを証明するリサイクル券を譲渡する形になるからです。

 

 

<消費税の取扱いは?>
では、このリサイクル預託金の譲渡は、消費税の取扱い上はどのようになるのでしょうか?

 

答えは、『有価証券の譲渡として取り扱われる』です。

 

消費税法上、リサイクル預託金の譲渡は、有価証券の譲渡として取り扱われ、その譲渡代金の5%相当額を『非課税売上高』として、課税売上割合の計算上、分母及び分子に加算することになります。

 

リサイクル預託金自体、金額的には少額(6千円~2万円弱)である為、その5%相当額となると更に僅少な金額になりますが、消費税の申告上は忘れずに計上するようにしましょう。

 

 

≪終わり≫

仮想通貨は非課税売上

<仮想通貨の売却>

仮想通貨を売却し、売却益が生じれば、その売却益に対して法人税や所得税が課されます。

 

では、消費税の課税関係はどうなるのでしょうか?

 

<消費税は非課税>
手元にある仮想通貨を100万円で売却したとします。


この場合、その売却代金である100万円に対する消費税の課税関係は、『非課税売上』として取り扱われます。

 

消費税法上、支払手段及びこれに類するものの譲渡は非課税とされています(消費税法別表第一②号
 
国内の仮想通貨交換業者を通じた仮想通貨の譲渡は、この『支払手段』の譲渡に該当するものとされ、非課税取引として区分されています(国税庁_「仮想通貨に関する税務上の取扱いについてFAQ)_2019年12月版」)

 

<課税売上割合の計算上は除外>
消費税の申告を『本則課税』でする場合、当該課税期間中における課税売上高・免税売上高及び非課税売上高を基に『課税売上割合』という割合を算出し、仕入税額控除の計算をした上で申告をします。

 

上記のとおり、仮想通貨の譲渡代金は非課税売上高に該当します。

 

しかし、この『課税売上割合』の計算上は、当該仮想通貨の売上代金は、非課税売上高から除外することになっております。

 

つまり、仮想通貨の売上代金は、『課税売上割合』の計算に影響させない、ということになります。

 

 

《終わり》

 

「フリーレント家賃と課税仕入について」

不動産の賃貸借契約において「フリーレント」という言葉を聞いたことがあると思います。


「フリーレント」とは、賃貸借契約期間中の一定期間(当初の2ヶ月等)について家賃を無料にするというサービスです。不動産の貸主が借主を募集しやすくするために、よく目にします。

このフリーレント契約がある場合、会計の世界では『フリーレント会計』という処理を適用する場合があります。

 

フリーレント会計とは?
フリーレント会計とは、『賃貸借契約期間中に支払う家賃総額をフリーレント期間を含めた賃貸借契約期間全体の月数で割って毎月の家賃計上額を平準化する』という会計手法です。

 

では、具体的にみてみましよう。


下記の契約を法人(事業年度は毎年1月~12月)が事務所用として契約したとします。


(賃貸借契約期間)2020年1月~2021年12月までの24ヶ月間

(月額家賃)10万円

(フリーレント期間)2020年1月~6月までの6ヶ月間 

 

2020年1月~6月までの6ヶ月間は家賃が無料となる訳ですから、当該法人における2020年1月~12月までの事業年度に発生する家賃支払額は計60万円(=月額10万円×6ヶ月)となります。


ここでフリーレント会計を適用すると下記のようになります。


(賃貸借契約期間中における支払家賃の総額)月額10万円×18ヶ月=180万円
(賃貸借契約期間中の1ヶ月当たりの平均家賃額)180万円÷24ヶ月=75,000円(A)
(2020年1月~12月までの事業年度において計上する家賃)75,000円×12ヶ月=90万円


フリーレント会計を適用した場合、2020年1月~12月までの事業年度中に損益計算書に計上する家賃額は、計90万円となります。


つまり、『フリーレント期間を含めた1ヶ月当たりの平均家賃額(A)の12ヶ月分を当事業年度中に計上すべき家賃額』と捉え、損益計算をすることになるのです。


<消費税との関係は?> 
では、当該法人が消費税の課税事業者(本則課税)であった場合、2020年1月~12月の課税期間における課税仕入となる家賃額は、『実際に支払う60万円』または『フリーレント会計を適用した90万円』のどちらになるのでしょうか?


結論は、『実際に支払う60万円』が当課税期間における課税仕入となります。


この論点については、2018年6月15日付で国税不服審判所が裁決を出しております。


<法人税との関係は?>
 では、法人税との関係はどうなるのでしょうか?


当該法人の2020年1月~12月の事業年度における法人税の計算上、損金として認められる家賃額は『実際に支払う60万円』または『フリーレント会計を適用した90万円』のどちらになるのでしょうか?


この点も上記の裁決事例で明らかにされており、損金として認められる家賃額は、『実際に支払う60万円』である、という結論が出されています。

 

 

《終わり》

「DESの消費税課税区分は?」

DES(デッド・エクイティ・スワップ、通称「デス」)という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?


この『DES』とは、『債務の株式化』と呼ばれる取引であり、簡単にいうと、債権者であるA社が債務者であるB社に対して有している貸付金をB社の株式に転換する取引を指します。


当該取引の結果、債権者であるA社側では『貸付金』が『株式(勘定科目でいうと投資有価証券等)』に置き換わり、一方、債務者であるB社側では、『借入金』が『資本金』に置き換わります。

 

当該取引のメリットとしては、下記が挙げられます。


■A社としては、B社の株式を取得することにより議決権を得られ、B社の経営に意見参加できる。
■B社としては、借入金という債務が消滅し、資本金に振り替わることにより純資産が増加し財務状況を改善できる。


では、当該取引に係る消費税の課税区分はどのように整理されるのでしょうか?


結論からいうと、当該DESを行った場合の消費税課税区分は『非課税取引』として処理されることになります。


上記のケースでは、A社の非課税売上高として計上することになる、という訳です。


過去の東京高等裁判所の判例によると、『DESは、貸付金債権の現物出資であり、当該取引は、金銭以外の資産の出資として資産の譲渡等に該当する』と判示されています。

 

貸付金等の金銭債権は、非課税取引となる『有価証券に類するもの』であるため、金銭債権の譲渡して非課税売上に算入すべきもの、という訳です。

 

金銭出資による株式取得は、消費税の判定上『不課税取引』となります。


『株式を取得した』という取引の結果だけを見れば、金銭出資による株式取得と何ら変わりません。


しかし、同じ『株式を取得した』という結果であってもDESの場合は、その途中過程において『金銭債権の移転(譲渡)が生じている』という点に着目し、金銭債権の譲渡として非課税売上として処理することになり、取引の結果が同一であっても消費税の課税区分が異なるのです。

 

 

《終わり》

「営業権の譲渡に関して」

新聞やニュースで企業の営業譲渡が報じられ、その報道の中で『営業権』という言葉を耳にしたことがあるかと思います。


この『営業権』とは、いったい何を指すのかご存知でしょうか?


国税不服審判所の裁決事例で、この『営業権』の定義を示した判例があります(2013.12.18


当該裁決によると、営業権とは『法人税法上、明文の定義規定はないところ、一般的には、企業の長年にわたる伝統と社会的信用、立地条件、特殊の製造技術等及び特殊の取引関係の存在並びにそれらの独占性等を総合した、他の企業を上回る企業収益を獲得することができる無形の財産的価値を有する事実関係をいうと解するのが相当である』と判示しています。

 

いわゆる『ノウハウ』や『ブランド』というものが該当するのでしょう。


では、この『営業権』を有償で譲渡した場合、当該譲渡対価には消費税が課されるのでしょうか?


この点については、国税庁から質疑応答事例が公表されており、『課税対象となる』と回答しています。


よって、営業権を譲渡した側では、当該譲渡対価が『課税売上』となり、一方、営業権を買い取った側では、当該譲受対価が『課税仕入』に該当することになる、という訳です。

 

《終わり》