<貸家の評価>
被相続人が所有していた賃貸アパート・マンション等の貸家及びその敷地については、相続財産の評価上、一定の減額措置があります。
建物部分については『貸家』として評価、その敷地については『貸家建付地』として 評価し、自用としての評価額よりも減額されます。
但し、上記の減額措置を受ける為には、相続が開始した時おいて賃貸の用に供されていることが条件となります。
しかし、賃貸アパートや賃貸マンションであれば、相続が開始した時において、たまたま空室になっていることも多いと思います。
では、相続が開始した時において空室だった場合には、それが『たまたま』だったと しても減額措置が受けられなくなってしまうのでしょうか?
<一時的な空室であれば適用OK>
この点の取扱いについては、国税庁の『タックアンサー_№4614』において明らかにされています。
当該タックスアンサーによると、相続が開始した時において空室だったとしてもそれが一時的に空室になっていたに過ぎないと認められるものについては、相続が開始した時において賃貸されていたものとして差し支えないものとされています。
この『一時的に空室になっていたに過ぎないと認められるもの』の具体例としては下記の例を挙げています。
①各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものであること。
②賃借人の退去後、速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されてい ないこと。
③空室の期間が、相続が開始した時の前後の例えば1ヶ月程度である等、一時的な期間であること。
④相続が開始した時後の賃貸が一時的なものではないこと。
<空室期間が長引いてしまったら?>
一般的に不動産賃貸業を営んでいれば、上記①~④の要件の内、①・②・④の要件は満たせると思います。
しかし、空室になった後、直ぐに新しい入居者の募集をしたものの中々次の入居者が決まらない場合もあるでしょう。
場合によっては、次の入居者が決まらず空室の状態が1ヶ月を超えてしまうこともあると思います。
そうなると③の要件を満たせなくなってしまいますが、果たして空室の期間が1ヶ月を超えてしまうと、即『空室扱い』となってしまうのでしょうか?
この点の判断については、過去に判例があります。
2015年11月11日付の国税不服審判所では『最も短い空室期間が約3ヶ月』という事例において『空室だった』との裁決を下しています。
また、2016年10月26日の大阪地裁では、『空室期間が5ヶ月以上』という事例において『空室だった』との判決を下しています。
上記の裁決例・判決例を踏まえると、『空室が一時的だった』と認められる為の空室期間の上限は『1ヶ月程度』と考えた方が無難と言えるでしょう。
≪終わり≫